2014/06/29

CMになると音量下げなくなった人、いますか?



本日の朝日新聞『声』に掲載になった。

CM音量、ラウドネス規制施行で本当に小さくなった?という投稿だが、小学生からおじいちゃんおばあちゃんにまで意味がわかるようにと、編集部による修正が3回された。限られた字数なので音響のプロが読んだら、なんだかな、って感じかもしれないが、そうした事情なのでこういう表記になった。関係各位さま、申し訳ない。


俺は子供の頃からテレビが大好きで、家に居れば一日中テレビつけっ放しの生活を送ってきた。かつてからCMになると大音量になるのはスポンサーあってのテレビ局、ということで目をつむってきた(あんた何様!?w)。

アナログ時代でも、CM音量に関してはCM音響のプロが調整をして、局への搬入基準値内でも大きく聴こえるように特殊な作業をしていた。普通のスタジオではできないこの費用がまた高かったナ...

リモコンが普及する頃になったら、より一層CMの音量がデカい気がしてきた。茶の間はMAスタジオかよ!ってくらい、手許のリモコンで音量調整しながらのテレビ鑑賞が当たり前の状況だった訳だ。ここでもまた、スポンサーさまさまだからな、と、諦めてた。


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2012年の春先、CMと番組の音量を均一化するラウドネスと呼ばれる規制が全世界で行われる、と、お達しがあり、制作に携わる全社員向けのセミナーが何度か催された。俺は、そうか、ついにこれでリモコン片手のテレビ鑑賞から逃れられるんだ!と、いち視聴者として喜んだのだった。元々は、CMの音量が大きいのでCMだけの規制だったのだが、CM業界が「ふざけんな!なんでCMだけなんだよ、番組も同じにヤレ!」と、罵りあいになったかどうかは知らないが、しぶしぶ番組もやらざるを得なくなったというのが真相らしい。

ラウドネスは、従来のVUメーターを使ってのピーク音量規制ではなく、人が感じる音の大きさを数値で表す新しい規準だという。「音量」ではないのだ。人間の耳への「聴こえ方」の値で、その値は、-24LKFS±2dBでなくてはならない。俺は、何じゃそれ?って感じだったが、まぁそれで良くなるならいいか、と。俺は音響の専門家ではないので、詳しく知りたい方はググってくれ。

ポスプロではVUメーターはお払い箱で、新たにラウドネスメーターという特殊機器を導入しての調整作業をしなくてはならなくなった。1時間番組ならまず1時間かけて計測をする。そしてそれなりの時間をかけて基準に達していない部分を修正する。それから元テープに音データを実時間かけて戻すので、最低でも収録時間の3倍はかかるのだ。こちら発注サイドとしては、そのための費用が数万円かかる。たかが数万円じゃないかというが、韓ドラなんて短いタイトルで24話、50話以上はザラで、長いのは81話や151話、186話なんてのもあった。再放送になるストック分も全部やり直しだから、新作と合わせて3,000本以上は修正したことになる。しかも現在進行形だぞ。億、だよ、億!もともと儲かる業界でもないのに、こんなに金がかかるのか... それでベースアップもボーナスも無しかよ、って。あ、失礼、愚痴ですなw もう退職したからいいけどさ。冗談はさておき、これを全国の放送業界全体がやってるのだよ。改善されていないなら、本当に時間と金の無駄でしょう。

2012年の10月から試験運用、2013年4月からは完全施行なのでラウドネス調整済のマスターしか受け入れていない。それからもう1年以上経った訳だが、まだCMになると音がデカい。キッチンから「CMうるさいから小さくして!」と、司令官の怒鳴り声が飛んでくる。朝日新聞の記者も、CMの音にビックリしますよね。だからこの投稿を掲載したい、と、電話がかかってきたンだ。周りの人間に訊くと、そう?と、昔から何とも思ってない鈍感な人もいれば、だよね!という、人もいる。人それぞれ、でもある。

当基地の愛機〔シャープ・アクオス・クアトロン LC52-Z5〕で番組を観る時の音量目盛りが20だったのが規制後は24に。番組の音量は抑えらていることは証明されている。しかし、CMになると20以下まで下げる作業が生じているのが現状だ。変わっとらんじゃないか!と、ずーっと思っている次第だ。

ポスプロの担当者が言うには、その原因は日本だけが平均値測定方式で、欧米各国はピークレベルを抑える方式らしい。実際のところ欧米ではきちんとCM音量が抑えられてるのかな?あとで友人に訊いてみよう。それに、やっぱりCM制作現場の裏技があって、ラウドネス基準値内でも大きく聴こえるようにできるのも問題だ。抜け道はどんなものにも必ず存在する。

あと、実際のところ、各局でもその運用はまちまちにも思える。神谷町にある局は番組とCMがきちんと揃っている感じがする。そのほかの局は差が修正されていない気がする。あと、生放送は番組自体の音量が抑えられていて、CMとの音量差が大きい気がする。深夜の放送では比較的CMが抑えられている気がする。全局全番組は観れないし、きっちり測定器で測った訳ではないので全て「気がする」だが、視聴者はみんな「気がする」で、観てる訳だからな。

俺はささやかな抵抗として「CM音量のデカい企業の商品は買わない!」宣言をする!

そもそもCM音量がデカければ商品が売れると思っている企業・代理店・制作現場の考えを改めない限り、規制見直しがあってもイタチごっこになるんだろうな。実際に大音量CMの商品がバカ売れするという調査結果が出ているンだろうけどさ。じゃなきゃいつまでも視聴者をムッとさせる馬鹿げた作業を大の大人が続けてる訳ないしね。

長文失礼。



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